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2021.9.13

あれはこの街だけの局地的な流行だったから、遠くから進学してきた人は、私が何をやってるかもよくわからないかもしれない。北の街の秋のはじまり、日光に熱された地上の空気は、ほんの三、四メートル上昇するだけで風が吹き抜け、ひんやりと涼しい。私は、ブームがいちばん盛り上がっていた秋のことを思い出す。跳ね歩きは一部のスポーツで取り入れられたが、ゲームの展開がなんかボヤッとするし、一度跳ねたら着地までの数秒間は試合から消えてしまう。それで流行より先に廃れた。長い冬が明けたころには、誰も、そんな歩きかたをしてたことなんて忘れたように、一歩ずつ着実に地上を歩くようになっていた。跳ね歩きにつかっていた筋肉を、私たちはすぐにつかわなくなった。ただでさえ上京以来ろくに運動しなくなったせいで、前みたいに三階の高さまでは跳べないが、それはきっと、就職して忙しくしてる先輩兼同級生兼後輩も同じことだ。私たちは同じ高さで跳ね歩き、懐かしい教養棟の前でぶつかり合う。足裏を合わせて勢いを相殺して、でもお互いを弾き跳ばせはせず、いっしょに真下に着地する。そうして私たちはようやく言葉を交わし、握手をするだろう、と思った、ところまで書いた。


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