2021.9.14

 しかしこう、こういうひと夜の思いつきは、夢から覚めて寝ぼけまなこでメモするときは面白いが、一日を過ごした夜に書き起こそうとすればその輝きは消えているし、九日間にわたって書きつづけたあと、別の夢とともに目覚めた朝にはもう色褪せている。というかもう、二日目くらいには、このネタで一作書きあげることはないんじゃないか、くらいの気持ちになってはいて、それでもひとまず区切りまで書いたのは、自分の発想に対する仁義みたいなものだ。このアイデアについてはこれでおしまい。とはいえ、私はこれから一生小説を書きつづけるつもりでいるし、百年先の自分がどんなものを書いているかはわからない。もしかしたらこの、いまはぜんぜん魅力的じゃない跳ね歩きのモチーフを、小説家として脂の乗りきった数十年後の私が、なんかこう良い感じに料理してくれるかもしれない。だから私は、〈跳ね歩きアイデアメモ〉とタイトルをつけたテキストファイルを、削除はせずに、〈保留〉フォルダに突っこんだ。そこにはそういう、私の意欲がひとまず途絶えたファイルがたくさんあって、あわせて五十メガくらいになっているが、いまのところ、そこからサルベージして作品化したものはない。