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ニュース
2020/10/4 『北海道新聞』朝刊 書評エッセイ「水原涼の降っても晴れても」掲載。ウィル・ハント『地下世界をめぐる冒険』 (棚橋志行訳、亜紀書房)について書きました。 2020/10/6 『日本海新聞』朝刊 「首都圏とっとり人物鑑」コーナーで取材していただきまし...
2025年9月16日
最北の手前での会話 ──『筏までの距離』あとがきにかえて
稚内で誕生日を迎えたのは二十三歳から四歳に変わる秋のことだった。十月十四日、この列島の最北に位置する港町ではすでに寒風が吹きすさぶ。ずっとあと、今の東京では真冬のごく寒い日にだけ着るコートを、北の街にいたころの私は秋や春先に着ていて、そのときも、暖房のよく効いた特急を降りて...
2025年6月26日
春のつづき ──『恋愛以外のすべての愛で』あとがきにかえて
「翌日読んでもらいたいささやかなあとがき」や「リリーへの手紙」が好きだった。いずれも著者のデビュー作である、庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』(庄司には別名義での作品がすでにあったが)や村上龍『限りなく透明に近いブルー』の巻末に附されたあとがきだ。作中に書かれたことが著者の身に実際に起きた出来事であるように、あるいは作品の主人公が自らこの小説を書いたのだというように、後日譚を語り、登場人物に呼びかける。虚実は曖昧になり、本を閉じた私は、ふと今自分のいる勉強部屋が、現実のものなのか、薫くんやリュウ──二作の語り手はいずれも著者と同じ名を与えられている──の暮らす作中の世界と地つづきなのかわからなくなる。部屋を出て階段を降りれば現実の私の母がおり、やがて兄や父も帰ってきて、夕飯を食べるうちにその感覚は薄れていくが、ふとあとになって思い返すたびに、あのとき自分がいたのはどちらだったか、と考える。 人は誰でも一生にひとつは小説が書ける、という紋切り型がある。小説はある人の人生を切り取ったものだから、自分の人生を書けばそれでいい、ということだ。しかし、小説
2025年6月18日
みんな無理せず、無理もさせずに ──『セクシー田中さん』問題報告書を読んで
最初はたしか、地下鉄駅で無料配布されているような、半分が広告やタイアップ記事で埋められた雑誌だった気がするが定かではない。どこかのオフィスで、プリンタ複合機に乗ってポーズを取る、赤く露出の多い衣裳の女性と、それをうっとりした表情で見上げる、会社の制服らしいものを着た女性が目...
2024年6月8日
言葉で築かれた墓碑
進藤純孝『ふり向けば独りきり』(光人社、1993.3)を読んだ。 第三の新人の同志たちとの交友も、彼らと併走してきた数十年の歳月も、文学論や小説家の評伝めいた記述も、ここにはほとんど含まれていない。最愛の妻を亡くした進藤は、何をしても妻のことを、妻との日々を、その不在を思っ...
2021年3月28日
召し上がれ!
昨夜の鍋の残りに、これも残りものの白米を投入して雑炊めいたものを作って食べた。くたっとした白菜、結び目からほどけ落ちた白滝、鶏肉のかわりに入れたベーコンの切れ端。よく味が染みて美味しいが、レンジでチンしてひと煮立ちさせただけなので、料理をした、という実感はほぼない。...
2020年12月8日
曇らなかった鏡
あれは京都だったのか、古都という枕詞を附されるのがふさわしい街並みのなかでペーパーナイフを買ったのは、修学旅行の自由行動の時間か、その街のどこかで学生生活を送る親戚の家を訪ったときだったかもう憶えていない。小刀を模した白木の鞘には、たしかその観光地としても名高い古刹か城郭の……
2020年11月3日
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