2022年6月26日2021.12.25おつりをこまかい小銭でもらい、各自に分配する。中途半端に残った三十九円は計算してくれたミツカくんのものだ。すまんねえ、とその程度の金額でもうれしそうにする。 あとこれ、みなさんおひとつずつどうぞ。学生さんが編みカゴを持ってきた。一人ずつ配ろうとしたのだろうが、いちばん近くに...
2022年6月25日2021.12.24恋人とルールーが、ルールーの新作について話している。宇野原さんが林原さんに、今月の文芸誌に載った君島さんの短篇の一節を口ずさんでいる。リンとエリカは私の知らない誰かについて陰口のトーンで交わしていて、ミツカくんとベラさんはそれぞれ一人で静かにグラスを傾けている。窓の外では学...
2022年6月25日2021.12.23いま世のなかには小説家としてデビューするための賞が無数にあって、私と宇野原さんと林原さんは、それぞれどこかの版元や雑誌が主催する賞を受けて世に出た。私と宇野原さんの賞はジャンル不問で、私は郷里を舞台にあまり倫理的によろしくない筋の、宇野原さんはリニアのトンネル掘りの話を書い...
2022年6月24日2021.12.22各自の飲みものと、料理もひとり一品ずつ。恋人はまだ戻ってきていない。リゾットの、まあ今日食べたのと違う味ならいいか、と思ってメニューを見ると、そもそも和風のリゾットは、ましてや七草リゾットなんてない。しかし考えてみれば二週間後には七草粥の日なのだから、今ごろ全国の産地では収...