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2021.4.4
今朝の電話のときや、直後のベラさんからのLINEでも、そこにルールーがいるとはわからなかった。数時間前に想像した、宇野原さんたちの家の居間の様子──酔っぱらい三人がしまいそびれたニトリの炬燵の三辺に足をつっこんでげらげら笑っている──を修正する。もうひとつの辺に、ひとりだけ...
2021年10月3日
2021.4.3
で、久保野くんは終電で帰ったからわたしもお役御免、だったんだけど、なんかベラちゃんとだらだら話してて、いま宇野原さんが起きて、なんでカオルおらへんねや!ってわめいたから電話した。迷惑だった? まだ寝てたかな。 いや、もうふた仕事やっつけたところ。...
2021年10月2日
2021.4.2
ハロー、元気? えっと、その声は……ルールー? ルールーだね。ルールーはからからと笑った。挨拶だけでわたしってわかるとは思わなかった。 ルールーはそう言った。宇野原さんのスマホから私に電話をかけようとする女性なんてベラさんかルールーくらいのものだ。そしてベラさんは、今朝の時...
2021年10月1日
2021.4.1
テキストファイルを立ち上げ、朝に書いたものを読み返す。修正はほとんどなく、安堵して書き出そうとしたところで、尻と椅子の間でスマホが震える。座ったまま引っぱり出してみると、また宇野原さんからの電話だった。 また、といっても、きっとあのあとすぐ寝た宇野原さんにしてみればもう明日...
2021年9月30日
2021.3.31
座談会のゲラはもう送り返したのだし、べつに原稿と突き合わせて読む必要なんてなく、暇つぶしのつもりで読みはじめたのだが、これはけっこう楽しいな。最後まで読み切ってファイルを閉じると、いま書いている中篇の約束をしていた編集者から、謝罪メールへの返事が来ていた。掲載予定が決まって...
2021年9月28日
2021.3.30
パソコンのスリープを解除すると、座談会のゲラが届いていた。この間作業したのは文字起こしを構成の鎌部さんが整えた原稿で、もちろんすべて私たちが自分の口から発した言葉ではあるのだが、発言をまとめるときに、それぞれの意図とずれた観点で要約されたり言い換えられたりすることもある。だ...
2021年9月27日
2021.3.29
私は恋人とのやりとりでしか、この、もう流行遅れで、誰も憶えていないようなスタンプをつかわないし、きっと彼女もそれは同じだ。でも私たちの間では、このペンギンはいつまでも感情を運びつづける。壁ごしのWE WILL ROCK YOUとか、玄関に置き去りにされた袋とか、このペンギン...
2021年9月26日
2021.3.28
色の出た茶をカップに注ぐ。すこし濃く、渋みのある味になっていた。一口、二口飲み、ケトルに残っていたお湯をさし、部屋に戻った。恋人にLINEで、〈お茶いれたからご自由に、やや濃いですが〉と送ると、すぐに返事が来た。土下座するペンギンの下に、ありがと候、という手書き文字のくっつ...
2021年9月25日
2021.3.27
いろんなYouTuberが、モーニングルーティン、というのを動画にして投稿しているのもいくつか観た。だいたいが朝のスキンケアの話で、あとはラジオ体操とか発声練習とか、愛猫とたわむれたり、そういう他愛もないことばかりで、五郎丸や槙野の、鬼気せまる表情でとりおこなわれるような儀...
2021年9月24日
2021.3.26
槙野智章が試合前、目の前に掌をかざして何か語りかけているのを、日産スタジアムで遠くから見たことがあった。他人のルーティンは、ほんの米粒ほどにしか見えない距離でもなんだか生々しく、私は、その仕草をテレビでなら何度も見たことがあり、リトルマキノと対話してる、と本人が説明してたの...
2021年9月23日
2021.3.25
ポットにバッグを放りこんで湯を注ぐ。色が出るのを待ちながら、ルーティンのことを考える。
2021年9月22日
2021.3.24
キッチンで湯を沸かしながら、すこし迷って、冷蔵庫のコーヒーではなく、棚からティーバッグを取り出した。アールグレイだ。香り高いどうこう、と説明文が箱には書いてあったが、私はぜんぜん紅茶に興味がなく、したがって他の品種との香りのちがいなんてわからないし、もちろん七行くらいあるそ...
2021年9月22日
2021.3.23
五郎丸歩がコンバージョンの前に両手の指を合わせる仕草が話題になったのは、いつのワールドカップだっただろう。高一の春にラグビーをはじめた私のポジションは五郎丸と同じフルバックだった。三年のオザキさんがピッチにいないときは私がコンバージョンを蹴ることになっていた。半年で腰を悪く...
2021年9月20日
2021.3.22
今日はすこしコーヒーを飲みすぎている。私は作業中、つねに手許に飲み物を置いておきたいたちで、仕事をすればするほどコーヒーを飲んでしまう。喉の渇きをいやすためなら水でも茶でも何でもいいはずなのに他のものではだめなのは、これもルーティンの一環なのだろう。じっさい、ケメックスの濾...
2021年9月19日
2021.3.21
考えてみれば、若い作家にチンカスくそじじいと呼ばれるには、老齢になるまで書きつづけなければならない。久保野くんの暴言をきっかけに、三十代の我々──大御所などではもちろんなく、中堅といえるほどの実績もなく、二十代の年若い書き手からの突き上げもはじまってきていて、そろそろ一生の...
2021年9月18日
2021.3.20
久保野くんがある大御所作家を批判するときに、あのチンカスくそじじい、と暴言を吐き、林原さんが般若みたいな顔に、なりはしなかったがたぶん心は般若になり、それはあんまり良い言葉じゃないですね、と君島さんが教育者の声でたしなめ、私と宇野原さんは大笑いしている、という一幕があったの...
2021年9月17日
2021.3.19
座談会中にどんな話を私たちがしたか、憶えていることはそれほどなく、きっと緊張していたのだと思う。原稿を読みながら思うのは、この人ら、なんかもうちょっと上手く言えんもんか、ということばかりだ。構成の担当者──今回はフリーライターの鎌部さん──が整えてくれてはいるが、私や宇野原...
2021年9月16日
2021.3.18
私と林原さんはジンジャーエールか何かを飲みながら、宇野原さんとミツカくんを主人公にしたBLについて話しあう。宇野原さんも、なんだかんだ言って君島さんの小説が好きらしく、さらに酔いがすすめば、まだ二作しか発表されていない君島作品の一節を口ずさみ、ポエジーがあるッ!と叫び、ゲロ...
2021年9月16日
プルースト 2021.6.11~2021.8.4
6月11日(金)晴、ずいぶんと暑い。 退勤後にスマホを見ると、プルーストの『失われた時を求めて』を通読したことがないか、あるとしてもよく憶えていない、ことを前提として、岩波文庫版全十四巻のうち、先方が指定する一冊だけを読んで何か書くように、との依頼がきた。私が指定されたのは...
2021年9月14日
2021.3.17
しかし世評がいちばん高いのも君島さんで、宇野原さんなんかは、ミツカくんの店で酒に酔っては彼の話をしている。 キミちゃん(宇野原さんはミツカくんの店で酔ったときだけそう呼ぶ)はさあ、私性があんねんな、強度や強度、郷土の強度や。湯布院の湯煙吸うて育って大体大で四年間チャリこいで...
2021年9月14日
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