2021年8月7日2021.2.7そのあとどんな話をしたのだったか、家に帰ってからも、ヴィッつぁんの横顔が目に焼きついていた。眼鏡のフレームの間からのぞく、こちらを見ることのないかたくなな瞳。それまで、顔にフィットするようになっているゴーグルのフレームに隠されて、私がその角度から彼の目を見たことはなかった。...
2021年8月6日2021.2.6それまで何を話していたのだったか、もしかしたら二人になってからずっと黙りこんでいたのかもしれないが、静かな、おたがいの足音しかしない道で、私は、ヴィッつぁんのふくらんだポケットを指さし、ゴーグルかけさせてもらえませんか、と言った。 嫌だわ。...
2021年8月5日2021.2.5イカスミスパ会の途中、監督の家──彼の本業は土建屋の社長で、校区の端の山の麓に、芝の庭つきの大きな家を構えていた──の庭で毎回恒例のリフティング大会があり、ヴィッつぁんはそのとき、サンガのケースからゴーグルを取り出して、シャキーン!という効果音を叫びながらベルトを締めて参加...
2021年8月4日2021.2.4乱暴なかんじでキーパーの、名前を忘れた誰かがつっこむ。きっと彼も、ヴィッつぁんのまとう静謐さを乱すのをためらって、ケースが閉まるのを待っていたのだろう。 サンガ好きだし。 好きだからっておまえ。 エドガーがJリーグに降臨したらサンガ優勝まちがいなし。 そらそうだな。...