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2021.2.24
レギュラーでもなかったと思います。たまに私たちの小学校の校庭で試合することもあって、テニスコートが校庭の端だったから見えたんですけど、メガネくんはだいたいベンチでした。出ても代走とかで。 山添さん、テニス部だったんですね。そういえば最初の打ち合わせで錦織圭の話されてましたね...
2021年8月24日
2021.2.23
コンタクトにしたなら、野球もやりやすいと思いますけど、そのためじゃなかったんですね。私は受領メールへの返事にそう書き添えた。ふだんならそれでこの話題は終わりなのだが、記者も興が乗ったらしく、私たちは、新聞のルールに合わせた表記変更の確認、紙面にあわせたレイアウト、じっさいの...
2021年8月23日
2021.2.22
そのことを、当初はヴィッつぁんについて書いてたけどぜんぶ消した、ということを、原稿を添付したメールに書いた。担当記者からの返信には、彼女も小学生のころのクラスメイトに、目が悪いけど運動が好き、という男子がいて、でも彼は野球部だから、ゴーグルにつけかえなくても、サッカーほど支...
2021年8月22日
2021.2.21
もう一ヶ月ちかくずっと私はヴィッつぁんのことを考えつづけていて、とうにコラムも、ヴィッつぁんについての記述を削ったものを送稿したのだからもうヴィッつぁんのことは忘れなおしてもいいのに、いまだにヴィッつぁんの記憶は書ききれていない気がしている。
2021年8月21日
2021.2.20
私が、ほとんどのチームメイトのことを忘れてしまったいまもヴィッつぁんのことを、その顔やゴーグルや、サンガの眼鏡ケース、声、そういうことを思い出せるのは、きっとあの夜があったからだ。ヴィッつぁんは私のことを憶えているだろうか。
2021年8月20日
2021.2.19
それとも、私の様子を見かねた両親が買ってくれたのだろうか? いずれにしても、填めてみると手首が蒸れてかゆくなって、けっきょく二、三度しか身につけることはなかった。サンガもほどなく二部リーグの中堅ぐらいのチームになって、私たちの街で試合をすることはなくなった。そしてACミラン...
2021年8月19日
2021.2.18
あれは、ヴィッつぁんがくれたリストバンドだったのだろうか。
2021年8月18日
2021.2.17
二個セットで売られていたリストバンドで、あの夜ヴィッつぁんは両手首にはめていた。年に一度の京都サンガのホームゲームでも、親にねだって──親たちは、招待券をもらったのだし、何らかのかたちでチームにお金を落とさなければ、という義務感にかられでもしたように、消しゴムだのトランプだ...
2021年8月17日
2021.2.16
私は彼への寄せ書きに、ヴィッつぁんにいっぺんホンキでタックルされてみたいっす!とテキトーなことを書いた。イカスミスパ会で色紙を受け取ったヴィッつぁんは、ほかの人の言葉を読み上げてうれしそうにゲラゲラ笑っていた。もちろん私がその場でホンキのタックルをされることはなかった。本家...
2021年8月16日
2021.2.15
もうずっと忘れていた、それで何の不都合もなかったヴィッつぁんを思い出したとたんに、ヴィッつぁんにまつわる、私がサッカー部に入ってから彼が卒業するまでのほんの三年間にすぎない、それでも数多い記憶が、ヴィッつぁんがついでに拾い上げてきたように──今朝、寝起きの頭でなにか、似たよ...
2021年8月15日
2021.2.14
ヴィッつぁんのことを、私がそのゴーグルをかけさせてもらえなかったことを、すべて削れば千字におさまりはするのだが、その文章はヴィッつぁんなしには導き出されえなかったもので、ほんとうに前段を──五千字あまりを削っても成り立つものなのか。私はほんとうは、視界とか解像度とか小説のこ...
2021年8月14日
2021.2.13
書き終える頃にようやく自分が何をいいたかったのかに気づくことがある。それがわかったあとに最初から読みかえす。そして私性の出すぎたところを削り、主題との接続のうすい枝葉を落とす。そういうふうにして仕上げるつもりだったのだが、毎回千文字以内、というコラムの枠に対して、ここまで私...
2021年8月14日
2021.2.12
私たちは視界のありようを切りかえられるし、実在しない光を見ることもできる。それは小説を書くとき、作品ごとにちがうパーソナリティの語り手を設定し、その視界を、その言葉で描写させるのと似ているような気がする。だから──という接続は強引だろうか、とふと思うが、それをいうならここま...
2021年8月12日
2021.2.11
色がちがう。広さがちがう。解像度もちがう。それが人の視界だ。ゴーグルから眼鏡につけかえれば、サングラスをかければ、コンタクトを入れれば、かんたんにその視界のありようは切りかえられる。アイマスクをつかえば真っ暗にもできる。夜寝る前、とりわけ、ぎりぎりまでスマホでニュースやなん...
2021年8月11日
2021.2.10
色つきのゴーグルをはめてプレーしていたダーヴィッツは、ほかの二十一人とはちがう色のボールを追いかけていた。何で読んだのだったか、仮に視界のなかの色がすべて反転していても、生活上の支障はないに等しいらしい。私たちはきっと、わずかずつであれ、それぞれにちがうものを見て美しいと思...
2021年8月10日
2021.2.9
ヴィッつぁんは眼鏡がないと本も読めないくらいらしい。私は裸眼でプレーしていたが、テレビゲームのやりすぎでぐんぐん視力が落ち、ヴィッつぁんがいなくなったあと、小六でコンタクトレンズを使いはじめた。あたりまえのことだが、視力は人それぞれ違う。ということは私たちは、それぞれ違う視...
2021年8月9日
2021.2.8
ヴィッつぁんの視界は、どんなだったのだろう。水泳の授業でゴーグルをつけたことくらいはあるが、その状態でボールを追って校庭を走り、人と身体をぶつけあったことは一度もない。ゴーグルにかくれて真横からはヴィッつぁんの目が見えなかった、ということは、ヴィッつぁんは真横から飛んでくる...
2021年8月8日
2021.2.7
そのあとどんな話をしたのだったか、家に帰ってからも、ヴィッつぁんの横顔が目に焼きついていた。眼鏡のフレームの間からのぞく、こちらを見ることのないかたくなな瞳。それまで、顔にフィットするようになっているゴーグルのフレームに隠されて、私がその角度から彼の目を見たことはなかった。...
2021年8月7日
2021.2.6
それまで何を話していたのだったか、もしかしたら二人になってからずっと黙りこんでいたのかもしれないが、静かな、おたがいの足音しかしない道で、私は、ヴィッつぁんのふくらんだポケットを指さし、ゴーグルかけさせてもらえませんか、と言った。 嫌だわ。...
2021年8月6日
2021.2.5
イカスミスパ会の途中、監督の家──彼の本業は土建屋の社長で、校区の端の山の麓に、芝の庭つきの大きな家を構えていた──の庭で毎回恒例のリフティング大会があり、ヴィッつぁんはそのとき、サンガのケースからゴーグルを取り出して、シャキーン!という効果音を叫びながらベルトを締めて参加...
2021年8月5日
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